ENEOSはCO2を電気分解しタイヤ原材料(カーボンブラック)の量産対応推進

ENEOS HDの資源開発子会社であるENEOS Xploraが同志社大学と組み、タイヤの強度を上げるのに使用されている「カーボンブラック」を、従来の石油・石炭から取り出す製法ではなく、CO2を電気分解する方法で量産すべく4月以降共同開発を進める事を決定。生産設備に数十億円を投資し、2030年代初頭に年間1万5千tonを量産する目標をあげる。

 

CO2からカーボンブラックをつくる技術は世界で研究が進んでいる段階で、現在は量産の事例はない。同社大学はすでに合成技術を確立しており、量産に向けた規模の拡大が課題との事で、石油製品に代わる新規需要取り込みを目指すENEOS HDと組み、量産に向けたコスト削減&生産効率向上の為の最適触媒開発を進めるとの事です。尚、原料となるCO2はENEOS HDの製油所やコンビナートから排出されるCO2を買い取って使用する他、CCS(CO2を分離・回収して地中等に貯留する事)向けに集められたCO2も一部使用する。この背景には政府が2026年度よりCO2の排出枠を売買する排出量取引制度を本格的に始める為、ENEOS HDとしては採算が見込めると判断したと考えられる。尚、ENEOS HDはCO2の活用については2024年にCO2とグリーン水素を原料とする「合成燃料」の実証生産も始めた。合成燃料とは環境負荷の小さいガソリン代替燃料やジェット代替燃料(SAF他)の総称で、既存の石油製品のサプライチェーンも生かせる為効率良く活用出来るので、開発に各社・各業界注力している。

(情報源;2025年3月11日 日本経済新聞)

 

<排出量取引制度とは?>

https://journal.meti.go.jp/p/36485/#:~:text=%E3%80%8C%E6%8E%92%E5%87%BA%E9%87%8F%E5%8F%96%E5%BC%95%E5%88%B6%E5%BA%A6%E3%80%8D%E3%81%AF,%E4%BB%95%E7%B5%84%E3%81%BF%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

 

 

 

 

エタノールからブタジエン生成の技術実証工場の建設(横浜ゴム)

横浜ゴムと日本ゼオンは、植物原料由来等のエタノールからブタジエンを生成する技術を実証する為のベンチ設備を、ゼオン徳山工場内に建設する事を決定した。ベンチ設備は26年より稼働開始し、ブタジエンの確保と量産に向けた各種データを収集していくと発表した。

 

今回実施する実験は、植物原料由来等のエタノールを高効率な触媒によりブタジエンに変換するもの。植物原料由来等の合成ゴム量産化する技術確立の第一歩を目指す。ゼオンはベンチ設備で生成したブタジエンからポリブタジエン(ブタジエンゴム)を試作し、横浜ゴムはそのブタジエンゴムを使用したタイヤの試作と走行テストを実施し、大規模実証に向けたデータ収集を行う。

 

両社は2030年代に植物原料等からブタジエン、イソプレンを高効率で生成する二つの技術の社会実装を目指しており、今回のベンチ設備は「エタノールからの高効率ブタジエン合成」に基づくものとの事です。

(情報源;2025年3月5日発行 自動車タイヤ新聞)

空気不要でパンクしない次世代タイヤを自動運転で実証実験(㈱ブリヂストン)

滋賀県東近江市とタイヤ製造大手「ブリヂストン」(本社・東京都)は、空気を入れず、パンクもしない次世代タイヤの実用化を目指し、今年1月に連携協定を結んだ。市が運行する自動運転サービスの車両に、同社が開発するタイヤを装着して実証実験に取り組み、2026年中の実装(実用化)を目指す。

 

同社によると、開発中のタイヤは「AirFree(エアフリー)」。空気充填じゅうてん不要のため、パンクせず、空気圧に起因する故障が発生しない。空気の代わりに特殊形状の樹脂製スポークが荷重を支え、乗り心地を確保する。さらに、路面に接するゴム部分は摩耗した場合、貼り替えることができる。スポーク部分はリサイクルしやすい素材を使用。粉砕、チップ化、溶かすなどして再成型をできるようにしたいという。

 

このタイヤを、同市が奥永源寺地域で運行している自動運転サービス「奥永源寺けい流カー」に装着して実証実験する。時速20キロ・メートル未満で低速運転する小型電動車両で、「グリーンスローモビリティ(グリスロ)」と呼ばれる。車両は定員6人のカート型。道の駅「奥永源寺渓流の里」(東近江市蓼畑町)と黄和田町、杠葉尾町の往復4・8キロ・メートルを、道路上に埋め込まれた電磁誘導線をたどり、「自動運転レベル2」で走行する。市は「グリスロのさらなる進化を促し、持続可能な循環型社会の構築に大きく貢献する」と期待し、同社は「パンクの心配がなく、メンテナンスの効率化と資源生産性の向上実現で、タイヤをより長く、安心、安全に使う新しい価値を創出する。高齢化、過疎化、労働力不足という地域課題に直面する地域社会を足元から支えたい」としている。

 

 (情報源;2025年3月2日 読売新聞)

 

植物由来合成ゴムを使用したタイヤの商業化検討(ブリヂストン他)

ブリヂストンとENEOSマテリアル及び日揮HDは植物資源由来の合成ゴムを使用したタイヤの商業化に向け3社連携を加速する。3社は2022年から植物資源由来のバイオブタジエンとタイヤ用合成ゴム製造の基礎的な技術検討や市場調査を進めてきた。2024年7月、ENEOSマテリアルと日揮HDの2社が参画する「木質等の未利用資源を活用したバイオものづくりエコシステム構築事業」がNEDOの「バイオものづくり革命推進事業」に採択されたのを受け、3社は植物資源由来の合成ゴムを使用したタイヤの商業化に向け、以下の取組みを促進する。

 

①植物資源由来のバイオエタノールより得られるバイオブタジエンの製造

②同バイオブタジエンを使用した合成ゴムの製造

③同合成ゴムを使用したタイヤの開発

 

2030年代前半でのタイヤ商業化をめざし、3社で2028年迄にパイロット装置による植物資源由来の合成ゴムを使用したタイヤの技術検証を開始する予定との事です。

 

                    (情報源;自動車タイヤ新聞 2025年2月19日)

タイヤメーカー水平リサイクル最新展開状況(ブリヂストン&住友ゴム)

タイヤメーカーにおける水平リサイクル(使用済み製品を原料として再び同じ種類の製品を製造する事)関連の情報を連絡致します。

 

<ブリヂストン>

ブリヂストンは1月30日、タイヤの水平リサイクルの社会実装に向けて、関工場(岐阜市関市)敷地内に使用済みタイヤの精密熱分解パイロット実証プラントを建設すると発表した。2027年9月の稼働開始を予定、最大年間で使用済みタイヤ7500ton処理予定です。使用済みタイヤは精密熱分解後に分解油や再生カーボンブラックとして回収され、更に分解油はリサイクルオイル化し、合成ゴムの素原料であるブタジエン等の化学品となります。

 

又、再生カーボンはNEDO(国立研究法人)のグリーンイノベーション基金を新規に取得の上、石油由来の新品と同質のカーボンに変質する事で、従来より更に補強性を上げたリサイクルカーボンとして従来では使用できなかった部分(トレッド部分他)にも使用拡大を検討していきます。

 

同社は2022年から使用済みタイヤのケミカルリサイクルの取組みを実施してきましたが、2023年の小平地区での試作工場展開を踏まえ、今回はこれら廃タイヤからの原材料抽出の量産化に向けた安定製造の為に必要なプロセス設計や品質管理等のノウハウ取得が目的となります。この検討・検証を踏まえ、次期ステップ(2030年以降)は量産対応となる予定です。

 

 

<住友ゴム>

住友ゴムはタイヤ主原料の一つであるカーボンブラックにおける資源循環対応を三菱ケミカルと1月から開始した。今回の協業は住友ゴムから廃タイヤ粉砕処理品やゴム片を三菱ケミカルに供給し、三菱ケミカルはこれらを原料の一部としてコークス炉に投入てケミカルリサイクルを行うというもの。この取り組みで得られたタールよりカーボンブラックを生産し、それを住友ゴムが生産するタイヤの原料に使用する。通常カーボンブラックは石炭・石油から得られる重質油(タール等)を原料とするが、今回三菱ケミカルはタイヤ再生材料を原材料とするケミカルリサイクルを昨年からの実証実験を踏まえ、リサイクルカーボンを製造・販売する事を決定した。尚、コークス炉を利用しタイヤ再生材料を使用したリサイクルカーボンは世界初との事です。住友ゴムは該リサイクルカーボンをレース用及び一般乗用車向けに採用し、2026年以降採用を順次拡大する意向です。

 

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