王子HDが木質資源より化学品を作る実証プラントを立ち上げ

王子ホールディングス(HD)は、木材から再生航空燃料(SAF)やバイオプラスティックの原料となるバイオエタノールなどを、生産する実証プラントを鳥取県王子市に設け、今月21日に竣工式を開いた。紙の需要が年々低下する中、木質資源から化学品等を作るビジネスを次の成長の柱に位置付け、紙を作る事業からの事業転換する為の第一歩となるプロジェクトと位置付けている。実証プラントの建設費は43憶円で、木質由来のバイオエタノール等の生産設備としては国内最大級の規模となる。実証プラントでは様々な化学品の基幹物質となる糖液を、1年間で重さ3000トンのパルプと同等の量を生産する。また、それを原料としてバイオエタノールは年間1000キロリットル生産し、量産技術や事業性の検証を進める。

製紙業界では各社がバイオエタノール等の生産に向けて技術開発を進めている。大王製紙やレンゴーは古紙や建設廃材等のリサイクル材を原料とし、日本製紙は木材からバイオエタノールを生産するとしている。ただ生産性やコスト面等で課題があり、生産が本格的に立ち上がるのは2027年頃になると見込んでいる。一方、王子HDは独自技術で糖液を高効率で生産し、いち早く事業化する事を目指している。事業化の目途が立てば、2030年迄に設備を大幅に増強する予定。生産量は糖液で年間20万トン、バイオエタノールで10万キロリットルを目標としている。尚、米子以外の工場でも同様の設備導入を検討している。2030年代に糖液、バイオエタノール、ポリ乳酸を合わせて年間300憶円以上の売り上げを目指している。

国内の再生航空燃料(SAF)の需要量は5年後の2030年迄には現在の5.7倍の171万キロリットルへと拡大が見込まれる等、バイオエタノール等木質由来の化学品の需要は高まっている。

(情報源;2025年5月22日 日本経済新聞)

 

<以下が新聞記事コピー>

20250523113447171

レンゴー㈱&住友林業㈱が再生航空燃料(SAF)の原料を製造・販売する新会社設立

JSRA賛助会員であるレンゴーペーパービジネス㈱の親会社であるレンゴー㈱と住友林業㈱は再生航空燃料(SAF)の原料を生産・販売する新会社を年内に立ち上げる。建設・解体工事で出た廃材などを木材チップに加工しSAFの原料となるバイオエタノールを製造する。住友林業㈱と組むことで木材を安定的に調達できるようにし、バイオエタノールを大量生産する体制を整え、将来における事業転換に向けた試行を実施する。

 

新会社はレンゴー㈱子会社の静岡県富士市にある大興製紙㈱の敷地内にプラントを建設する。住友林業㈱が建物の建築や解体の際に出た廃材や端材から作った木材チップを大興製紙㈱に供給。大興製紙㈱が木材チップをパルプに加工する。そのパルプを新会社のプラントで糖化・発酵させてバイオエタノールを製造する。2027年稼働を計画する。

 

生産したバイオエタノールはSAFを生産する石油元売り会社へ販売。最終的に生産されるSAFは日本航空(JAL)などの国内航空会社を中心に供給される見込みです。SAFは石油由来のジェット燃料に比べて二酸化炭素の排出量を8割減らす事ができる。日本政府は30年までに国内で消費する航空燃料の10%にあたる172万キロリットルをSAFに置き換える事を目標に揚げている。

 

(情報源;日本経済新聞 2025年4月23日朝刊)

<SAFとは?詳細説明>

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/saf.html

日本製紙等が航空燃料SAFの原料生産で新会社立上げ

日本製紙、住友商事及びバイオマス関連のスタートアップGreen Earth Instituteの3社で、持続可能な航空燃料(SAF)の原料を生産・販売する共同出資会社を2025年3月に設立すると発表しました。日本製紙の岩沼工場内に生産設備を導入し、SAFの原料となるバイオエタノール等を生産する。GEIが開発した低コスト生産方式を採用し、27年には1,000キロリットル以上生産する予定であり、2030年頃までには生産能力を数万キロリットルに増強予定です。尚。国交省は2030年には国内で172万キロリットルの量が必要になると考えているとの事です。

 

バイオエタノールの原料としては近隣で調達できる木質チップを使用し、「地産地消」により輸送時に発生するCO2の排出量も少なくて済むとの事です。日本製紙としては将来的には他の工場に設備導入する事も検討しています。尚、バイオエタノールはサトウキビや木材等の植物由来のバイオマスを原料として作られたエタノールです。そして、化石燃料に比べてライフサイクルにおけるCO2排出量が少ないことから、地球温暖化対策や石油代替燃料として注目されています。また、バイオエタノールはガソリンへの混合や燃料電池、化粧品などへも活用できとの事です。

 

                    <出典;日本経済新聞 2025年2月14日 朝刊>

 

<バイオエタノールの詳細資料は以下より>

https://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=6

 

<SAFの詳細資料は以下より>

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/saf.html

 

 

王子HD最先端半導体向け材料に参入(木から半導体材料)

王子ホールディングスは2ナノ(ナノは10憶分の1)メートル世代以降の最先端半導体向けの材料に参入する。木質由来の成分を使った「フォトレジスト(感光材)」を開発し、2028年に事業化を目指す。国内の紙需要が減る中、紙の材料である木質や既存設備を生かした化成品の製造を成長の柱に定める。(情報源;日本経済新聞 2025年1月15日朝刊)

 

 

紙以外を作るビジネスへの転換を図る王子HDは木質から取り出した成分を原料にした「バイオマスレジスト」の開発を発表しました。30年代の年間売り上げは100憶円を目指す。レジストは半導体材料の一つで回路を描く為に不可欠な材料です。基盤(ウエハー)に塗布して光を当てるとその部分の成分が変化し、パターンを焼き付けます。最終的にレジストを除去する工程を経てウエハーに回路を形成されます。半導体の性能を高めるには、この回路の微細化が必須となります。現在主流の「化学増幅型」と呼ばれるレジストは更なる微細な回路形成には限界があるとされています。王子HDは木質由来のレジストを開発し、半導体の2ナノ世代以降に求められる性能をすでに確認しています。同社のレジストは環境負荷が少ないことも利点です。従来のレジストは光に対して反応感度を上げる為、有害性が指摘される有機フッ素化合物(PFAS)が使われるケースが多かったのですが、バイオマスレジストは木質由来の高分子(ポリマー)と溶媒だけでできている為、露光によるポリマーの分解のし易さが一般的な従来品と比べて約8倍と高く、PFASの添加剤が不要となりました。微細な回路は添加剤のわずかな濃淡でも影響を受けやすく、添加剤を無くす事でパターンの解像度が高まる結果となりました。

 

これまで木質由来の素材を半導体材料に活用するには不純物(金属成分)の除去が課題でしたが、王子HDは不純物を除く精製技術を向上させて克服しました。医薬品や食料向けでバイオマスを検討する中で、蓄積する知見が効果を発揮しました。今後、王子HDは半導体以外の新事業育成にも力を注いでいくとしています。木質資源から化学品などを作る「木材バイオビジネス」へ事業構造の転換を進める意向です。エタノールやポリ乳酸のもととなる基幹物質「糖液」も、王子HDの次の成長ドライバーと位置付けています。この「糖液」は酵素を用いた独自技術によってパルプから製造されますが、2024年12月米子工場内に糖液のパイロットプラントを稼働させました。  また、2025年3月には同工場でバイオエタノールの生産も始める予定です。更に2028年にはポリ乳酸年間1000TONの設備稼働を目指しています。以上より、2030年代には糖液、バイオエタノール、ポリ乳酸で年間300憶円以上の売り上げを目指しています。

 

<参考資料>

20250120152358348

 

 

ページ
TOP